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さてと、散歩しに向かうのはいいけどデパート街って人混みが多いから好きじゃあないという俺のわがままで地元である頑張市の中央区であるパワフル商店街を訪れていた。昔から住んでいる商店街、何一つ変わらなくて安心する。一球もここの道が好きらしく大はしゃぎだ。
「ここまっすぐ行けばお爺ちゃんの家!」
一球は指を差しながら言う。その通り、商店街を抜ければ住宅街へと続き、そこに俺の実家がある。大学を卒業するまで住んでいた俺のもう一つの家だ。
一回りして駅前の噴水の目の前にあるベンチに腰を下ろす。さすがに年も二十八になると体の疲労は取れない・・・年を取るっていうのも恐ろしいもんだ。
なんて考え事をしていると喉が渇いていることに気がつく。
「一球、喉乾かないか? 何か飲みたいのはあるか? ・・・・・・あれ? 一球?」
視線を向けると隣に座っていた筈の一球はどこにも居なかった。マジか・・・目を逸らした隙にどっかに行っちまったか?
――金髪のおじちゃんだ!
遠くの方から聞き覚えの声が聞こえる。あれは一球の声だった。俺の足は声の主の方へと駆け出す。
「おい、一球! 目を逸らすと直ぐに行動するの止めろ」
「まるで高校時代の誰かさんと同じじゃあねえかよ。勝手に他人の為に自分だけ損するような行動してからよぉ? 小波」
俺は目を細めると・・・そこに立っている人物に気がついた。意地悪そうに笑みを浮かべて立つ人物には見覚えがあった。
金髪の頭に襟足だけが黒く、ニヤリと見せる白い歯とギラリと輝かせる八重歯が特徴的だった。そいつは高校時代の友人の一人でありバッテリーを組んでいて、今は極亜久やんきーすの五番を務めている星 雄大(ほし ゆうだい)だった。
「よっ、星!」
「おう。お前も今日はオフで地元に帰ってたのかよ。それにしても・・・お前の息子も大きくなったじゃあねえか。髪型と顔はお前似で・・・髪色と目の色は早川そっくりじゃあねえか!」
星は一球の頭を撫でる。大きくなったと言っても、星と俺たちはオフシーズンに集まって同窓会を開いてるからちょくちょく会ってるはずなんだけど・・・ま、一球も日々成長しているってことだな。
「ほら、一球。挨拶しろ」
「よっ、星!」
「――ッ!」
一球はさっきの俺の返事の真似をして見せて星と俺は目を丸くしたまま、互いの顔を見つめあった。
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