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「~~ッ! おい、小波。お前とソックリな性格じゃあねえかよ! 育てが甘いんじゃあねえのか? 一応、俺年上なんだけど!」
「仕方ねえだろ? まだ子供だ。てか五歳相手にムキになるなよ。みっともねえ」
俺の言葉にピクリと来たのか、思い止まって「確かにな・・・」と呟き、再び一球の頭をゴシゴシと撫でると、俺と同じ癖毛頭がボワボワっと一層より酷くなって彼方此方に跳ね上がった。
「俺の事は≪星≫さんって言うんだぞ?」
「よっ、星!」
「――なっ!!」
クスッと俺は思わず笑った。さすが俺のことだな・・・と思わず関心する。星は怒りを抑えたまま立ち上がり、別れの言葉を告げて立ち去って行くのだが・・・。
「一球、お前は親父みたいになるなよ? 他人の事に優先で自分の事は全く見ようとしないで損な生き方をしてるバカだ」
「子供の前で変なこと言うなよ」
「アホ。事実を言っただけだよ。そんじゃまたな、球場で会おうぜ」
手を振って星は立ち去って行った。俺はそれをジッと見つめて立ち尽くしていた。
ギュッ・・・。俺の手を一球は心配そうな表情で掴んだ。
「どうした? 心配そうな顔で見てよ?」
「・・・・・・パパはカッコいいよ。ぼくもパパみたいな人になりたい!」
「ふふ、何を言うかと思えば、いきなりなんだよ。星に言われた言葉が気になんのか?」
コクリと無言で頷く。
星の言った通り、俺は損な生き方をして来てのかもしれない。事実、高校二年の時に恋恋高校はまだ世間的に認められて居なかった女性選手であるあおいの試合出場問題で一度、危機に追い込まれた事があった。その打開策として俺は一人で署名活動を行ったんだけど・・・中々数が集まらなくて集まるまでは学校には戻れないと考えていて思わず停学届けを出したほどだった。
・・・・・・人の事を優先して自分の事は考えない。今の星の言葉・・・。ま、言われて言い返すつもりはない。けど、度がすぎるのも良くはないのかもしれないな・・・・・・なんて思っていたりする。気を付けよう。
「なぁ、一球。パパがカッコいいって思ってくれるならさ、一つ約束してくれないか?」
「な~に?」
「野球をやると決めたら、チームワークを大事にして、皆に勇気や元気を与えられる野球選手になる事を目指すって」
「うん、ぼくもパパみたいな野球選手になる!」
これが一球と交わした最初で最後の約束だった。
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