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目覚めが悪い・・・・・・寝慣れない布団に入っているからだろうか。それとも、走馬燈のような夢を見ていたからだろうか。布団から体を起こして、寝ぼけ眼で腕時計に目を向けると、時間は午前の三時だった。中途半端な時間に目を覚ましたものだ・・・それにしても嫌な夢を見たものだ。
父さんがボクに言ってくれた最初で最後の約束。幼い記憶は日々を過ごして行くごとに薄れて行ったけど、あの時、父さんがボクに言った言葉は今でも覚えている。
だけどもう父はこの世には居ない。二十八と言う若さでこの世を去った。父である小波 球太が不慮の事故に遭って居なくなって六年の月日が経ってボクは今小学生六年生も終わり今日から中学生となる。
母であるあおい母さんは、アカデミーの指導も忙しいと言うこともあり、ボクは父の実家であるお爺ちゃんの家に居候する事となったのだ。
寝慣れないと感じたのは、ボクは今、父が過ごした部屋に入るからで、何時もと違うベッドで寝ているせいだ。
つまり、目覚めが悪いと感じたのは両方って事だな・・・・・・。それは関係ないか。
「父さん・・・・・・」
整理された机の上に並べられている写真に目を向ける。そこには若き日の、恐らく高校時代の父の姿と母の姿があった。婆ちゃんが言うには恋恋高校野球部を立ち上げた時の写真だという。
楽しそうな表情を浮かべいるのを見ると幼い頃に見ていた景色を思い出す。
手を引かれて色々な所を連れて回ってくれた大きな手・・・暖かい笑顔・・・何もかもあの人のことだけは忘れては居なかった。
時代の発達は恐ろしいもので、ネットで小波 球太の事を調べると色々な事が書かれていた。高校時代、大学時代、社会人時代と様々だった。それを見るだけでボクの知らない・・・父さん。野球に熱を注いでいた父さんの姿が書かれているのを見ると、ますます憧れが強くなった。
父さんがボクに言ってくれた約束。ボクは守れるかな? それでもボクは少しでも父さんに近付きたい。そして、いつか追いつきたい。だから・・・ボクも中学でも野球をやるよ。
小波 球太がそうであったように、息子であるボク・・・小波 一球もいつだって野球少年なんだから!
ーprologueー
そして、物語は始まる・・・中学の舞台で新しいサクセスストーリーの始まりを告げた。
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