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藤田さんと並んで歩き、エントランスの自動ドアを通ると駅へと足を向けた。
「斎藤一がどうして、蔵に沖田総司の日記を隠したんでしょうか?ほら、斎藤一って確か子ども居ましたよね?その子ども達に新選組のこと世に伝えてもらえるチャンスじゃないですか。沖田総司はこういう人だ、とか」
「斎藤一には、どうしても隠さなければならない理由があった……」
高いビルが建ち並び、夜になった東京の町並みはネオンの光で昼間のように明るい。
相変わらず、今朝と変わらず大通りは車が行き通い、歩道路も同じく人々が行き交う。
藤田さんは、のんびりとした足取りでただ前を見つめながら歩いていた。
私は、綺麗な顔立ちを持つ藤田さんをチラチラと窺い見ながら、前から来る歩行者を避けて歩く。
藤田さんの横を通り過ぎた女性は、かなりの確率で二度見をする。
それほど彼は、整っている。
そう、全てにおいて整っている。
「その理由って……。と言いますか、なんで、そんなに詳しいんですか!!私、今日一日で得た知識なんて、新選組ファンなら誰でも知ってる常識ばかりなのに……?なんですか、これ」
ネットの情報サイトにも載っていない事を述べる藤田さんを見つめて言うと、目の前に古びた冊子を差し出され、足を止めた。
「これが、斎藤一が隠していた沖田総司の日記だ」
「えっ!?な、なんで持ってるんで……おっととと。ありがとうございます」
同じように足を止めて淡々と述べる藤田さんに肩を引き寄せられて、前から来る歩行者から避けることができた。
そういうさり気ない優しさも女性社員からモテる理由だろう。
いや、そんなことを考えてる場合じゃなくて……。
なんで、この人がこんな大事な日記を……?
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