浅葱者

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「秋月なら信じてくれるかと思ったのに、な……」 「だったら、証拠を見せてくださいよ。その高校生に会うとか……」 「その子は今は意識がない……。医者からは命に別状はないが、意識が戻らないかもしれないと言っていたらしい」 「……っ」 歩き出した私の後ろを付いてくるようにして歩く藤田さんは、明らかに落胆した声を零している。 さらにその高校生は、意識が無いと言った。 もし、このままその高校生の意識が戻らないなら、私達が記事にしようとしている題材が大きく変わってしまうのが予想出来た。 月刊Asagiは、元はといえば、歴史月刊誌から情報月刊誌に変わったものだ。 まだ歴史月刊誌の名残が抜けていない、この月刊Asagiの表紙は決まって、私達が調べた内容の記事が載せられる。 つまり私達の役目は重大なものである。 こんな、いつ意識が戻るかも分からない子を待っているのは時間のロスだ。 「安倍君に連絡しますね。記事内容の変更って」 「お前は容赦がないな。五日間だけ待ってくれないか?五日間なら、まだ支障が少ないだろう?」 「…………じゃあ、私と安倍君にご飯奢ってください」 「良いだろう。それくらいなら、全然大丈夫だ」 「明日から五日間ですよ?」 「……悪魔だな、秋月」 後ろで困惑した声が聞こえてきたが、私はさっさと帰宅するために駅へと向かった。 彼に、この月刊Asagiの歴史記事のために努力をしようとしているのはよく分かる。 だけど私にも、この月刊Asagiが廃止となり、働く場所が変わってしまうのが嫌だという理由で、今回は今以上に頑張りたいと思っている。 最後になるかもしれない、この仕事を失敗するわけにはいかない……ーー。  
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