浅葱者

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藤田さんと約束した五日目の夕方。 例の高校生の意識が昨日に戻り、その高校生の親に許可をもらって、仕事の帰りに病院へ足を運んだ。 個室の病室、ベッドから上半身を起き上がらして、窓から見えるオレンジ色に染まる空をぼんやりと眺める女の子がいた。 頭には包帯が巻かれており、よくよく顔を見れば、目元はどこか赤く腫れているようにも見えた。 「具合はどうですか」 「……っ!?」 病室に入るなり藤田さんが声をかけるとその子は驚いたのかビクリと肩を縮こまらせて、私達へと振り向いた。 彼女は、藤田さんの顔をまじまじと見つめて、スッと目を逸らしてしまう。 私達は苦笑いをして、一度視線を合わせてから、彼女が居るベッドの傍らにある椅子に腰を降ろした。 「お母様から聞いてると思いますが……。初めまして藤田総一です。そして隣の者は、秋月佐理。病み上がりでバタバタとしてしまいすみませんが、いろいろと聞きたいことがありまして」 「藤田……さん?」 「……はい?」 藤田さんが軽く自己紹介をしながら、彼女に名刺を渡すと、受け取った彼女は名刺を見つめてポツリと掠れた声で藤田さんを呼んだ。 「斎藤様にそっくりですね」 「……そうですか」 「初めまして、桜井琥珀です」 彼女、桜井琥珀さんは、藤田さんを見つめて満面の笑みを零している。 その笑みの中にちょっとした照れ笑いも含まれているようにも見える。 桜井琥珀……。 五日前に見た藤田さんが持っていた沖田総司の日記に書かれていた名前と一緒。 本当に、幕末に生きた桜井琥珀と今、目の前に居る桜井琥珀さんは……同じ人物なのだろうか? 現実的にあり得ないだろう……。 夢小説の読み過ぎかな? 「琥珀さんに……これを見せたくて持ってきたんですが……」 藤田さんは、そう言って例の日記を彼女に見せた。  
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