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「ただいま……」
藤田さんの車で家まで送ってもらった私は、ヒールを脱ぎ捨て、覚束ない足取りでベッドへと向かった。
藤田さんの家とは違って、ワンルームマンションの安い家。
藤田さんの家、羨ましいなぁ。
というか、どこのお坊ちゃんなんだよ……。
そう思いながら、ベッドにダイブをする。
思いの外、飛び込みすぎたのか、隣の棚に手をぶつけて、写真立てが派手な音をたてて床に落ちてしまった。
『あー……もう!』と束ねていた髪を解きながら、棚に落ちた写真立てを拾いあげる。
「・・・」
写真には、今は居ない優しいお義母さんと厳しいお義父さんの間に立つ私が笑顔を浮かべてピースをしていた。
私は、本当の親が誰なのか分からない。
気づけば孤児院に居て、皆が十二歳だと言うからそうしてきた。
皆が藤原佐理ちゃんって呼ぶからそう通してきた。
記憶なんて曖昧で、孤児院の先生は、よく私にこう言った。
『貴方は、捨てられた子なのよ』と……。
当時、理解をしていなかったけれど、今になって酷い先生だなって思う。
そんなある日私は、この写真の中のお義母さんとお義父さんに養子として引き取られた。
二人共私のことを本当の娘のように育ててくれたのに……。
交通事故で……亡くなった……。
「ヤバ……思い出すだけで涙が出そう……お風呂入って寝なくちゃ」
私は、過去のことを思い出して溜まった目尻の涙を拭うとベッドから立ち上がった。
私の本当の親は……誰……ーー。
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