霞む景色

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とある高校の近くの交差点で女子高生がトラックに跳ねられた。 近くに居た若いサラリーマンがすぐに女子高生の傍に駆け寄り、意識の確認を取りながら、救急車を呼ぶ。 そこら一帯は、騒然となる中、白衣を着た白髪の青年が彼の傍に歩み寄った。 その青年の姿は、まるでこの世の者とは思えぬほど美しい顔立ちをしている。 「落ち着いてください……。彼女は、命に別状はありませんよ」 「ですが……!!」 「うん……?この子……」 青年は、白衣のポケットに手を入れたまま意識が朦朧としている女子高生を見下ろすとスッと目を細めた。 そして、ポケットから眼鏡を取り出して掛けると女子高生の頭に手を添える。 後頭部が切れたのか、手にベッタリと血が付着するものの、気にもせずに何かを探るように彼女を見つめていた。 「止血をしないといけないので協力してくれませんか!!彼女、死んでしまいます!!」 若いサラリーマンが切羽詰まって声を荒らげる。 しかし白髪の青年は、彼の声が聞こえているのか聞こえていないのか、独りでにこう言ったのだ。 「なるほど……刺激に弱い細胞が衝撃により重力と伴って転移を起こしてしまう。運が良ければ意識のみ過去へ連れていく可能性ということもあり得る」 「何を、仰っているのです……」 「失礼、こちらの話です。お気になさらないでください」 女子高生の傷口から血が流れ出る中で、呑気に独り言を言う白髪の青年に若いサラリーマンは奇妙な者を見るかのように狼狽えていた。  
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