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瞼に眩しい光が当たるのを感じ、私は、ゆっくりと目を開けた。
病院……?じゃない。
どこか身体の一部がズキズキと打撲したような痛みがあるが、骨は折れていなさそうだ。
重たい体を起き上がらせて、辺りを見渡すとどこか見慣れない路地裏だった。
「藤田さん……、藤田さんってば……」
都市内にこんな田舎のような薄暗い路地裏なんてあったかな、と考えながらも隣で私と同じように意識がなくうつ伏せている藤田さんを揺すった。
彼は、『う……』と小さく呻き声を上げて、瞼をゆっくりと上げた。
しばらくの間、ぼんやりとしていたが、やがて目を瞠らせると頭を押さえながら、起き上がる。
「こ、こは……」
「分かりません。会社付近にこんな路地裏ありましたか」
藤田さんは、頭をぶつけたのか時々顔をしかめながら、左右にどちらにも続く通りへと出られる道を見つめた。
そして、密かにコンクリート製ではない、地面の砂を撫でる。
「・・・」
「藤田さん……?」
どこかぼんやりとしている藤田さんは、木製の壁に手を付いて立ち上がると、フラフラと覚束ない足取りで人が行き交う通りへと歩みを進めた。
私も彼の後を追って、通りへと足を向けた。
「……っ」
通りへ出た瞬間、眩しい光に目を細めたが、それは一瞬ですぐに視界が拓けてくる。
目の前に広がる世界。
それは、私がさっきまで居た世界とは全く違う世界が広がっていた。
何車線にもなる都市部の大通りではなく、コンクリートで造られた道ではない。
周りは低い木製の家々が建ち並び、着物を着た人々が忙しく左右を行き交う。
そこは、まるで今まさに私達が記事にしようとしている江戸時代のようであった。
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