浅葱者

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「来月号で、この月刊Asagiの売り上げが上がらなければ出版停止。この出版企画部も異動ということになる。最後まで手を抜かずにやり遂げてくれ」 朝礼で上司にそう伝えられて、社員の人々は困惑したような表情で仕事に取り掛かった。 最後まで……手を抜かずに……。 この月刊Asagiには、政治、ファッション、流行り、テレビ、芸能、歴史といった様々なジャンルを詰め込んだ雑誌となっている。 私と同僚、そして後輩の三人で、歴史についての知識、情報をまとめて、雑誌を載せている。 「秋月先輩、次の内容をどうします?あんなこと言われたら僕、プレッシャーでお腹が痛いんですけど……」 「うーん、どうしよっか。それより藤田さんは?」 「藤田先輩は、さっき連絡あって、なんか事故に巻き込まれたとか?」 「事故……っ!?それ、大丈夫なの!?」 「僕も心配して返事したんですけどね、大事ないとか言ってました」 デスクに座ると、肩下の茶髪の髪を後ろに束ねていたところに隣から声を掛けた後輩の安倍君。 二年前に入社してきて、元々歴史好きもあってか私と同じ部門に配属されてきた。 彼曰く、先祖が安倍晴明だとか言っているけど……どうも嘘っぽい。 そんな私は、歴史があまり好きというわけではない。 大学では、歴史科を専攻していたものの、ただ高校時代に日本史の点数が良かっただけ。 大学の授業では、歴史について学んではいたものの、あまり記憶になく、唯一覚えているのは卒論の『徳川の統一国家と神仏』をテーマとして必死に資料をかき集めて書いた事だけだ。 「ごめん、遅れた」 「お、おはようございます!藤田先輩。あの、事故したって……だ、大丈夫なんですか!?怪我とかは……」 「いや、俺が事故したんじゃなくて、高校生の子で昨日の話だ。警察にいろいろと聞かれて……面倒くさいな、あれは……」 目の前のデスクに疲れた顔をしてやって来たのは、同じ部門で同僚の藤田さん。  
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