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「お疲れ様です」
そう言って帰っていく人が一人、また一人となり、会社にはほんの数人となった。
私達は、図書館から多くの参考書を借りて、幕末や新選組、そして敵対していた人達を調べていた。
歴史となるとパソコンでは、調べ上げられない所も出てくる。
さらにどうしてもネットでは信憑性がないところから私達は、参考書や歴史専門家の方々に話を聞きに行ったりもする。
「もう……こんな時間か。二人共、帰るか」
「やっと……帰れるんですね!!じゃ、じゃあ、俺帰りまっす!お疲れした!!」
「え、安倍君?」
藤田さんが付けていた眼鏡を外して、目頭を指で押さえて呟くと同時に安倍君は、読んでいた本を机に置くとそそくさと鞄とジャケットを手に取って帰ってしまった。
先輩より先に帰る後輩って……。
ちょっと、気遣いが足りてないんじゃないか?
「さて、俺達も帰るぞ……」
「はい……」
藤田さんが帰宅する準備を始めると私は、慌ててデスクの上に散らかっていた参考書などを片付け始めた。
藤田さんとは、偶然帰り道が同じ方向でいつも二人で帰っている。
そして彼は、人に待たされるのが嫌いな性格をしている。
早く片付けて帰られるようにしないと……。
待たされるのが嫌ならどうぞ先に帰ってくださいって多少思ってるけど……。
「あ……っ!?」
そう思ったのが悪かったのか、大量に借りてきた本の山が崩れ、床に落ちてしまった。
はぁ……、と肩を落とし、しゃがみ込んで本をかき集める。
これぞ、藤田さんを毒づくなの呪いってか?
「ったく……ドジだな、お前は」
「すみません……すぐ片付けます……。あの、待つのが嫌でしたら先に帰って……」
「いや、二人で片付けたら早く帰れるだろう」
そう言って藤田さんは、此方に来て一緒に散らばった本を片付けてくれた。
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