最後はふたりぼっち

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 誤解の無いように言うと、私たちは不真面目なわけではない。クラスの大半は、『舞姫』に限らず教科書レベルの作品は読了しているし、一年生の頃からコツコツ勉強してきた貯金もある。部活を引退してやっとこさ勉強に切り替える男子高生とはそこが違う。これが、私たちが未だマイペースであるからくりだった。  まあ、そうは言っても携帯をいじったところで潰れる時間も知れている。結局、授業が佳境に差し掛かる頃には、大半が眠り姫になってチャイムを待つという按配だった。それが日常の風景だった。――今までは。  変化は静かに始まった。ふと、私の携帯画面に『メール受信中』の文字が浮かぶ。昨今のSNS普及に伴い、めっきりと使用頻度が減っていたツールだったので久しぶりの起動だった。迷惑メールかしらんと思ったが違った。登録のないフリーメールからの送信で、本文にはたった一行 『みつけてごらん』  とあった。匿名のフリーメールというのも不気味だったけれど、その語りかけてくるような平仮名の羅列が何とも不安感を煽ってきて、思わず隣の席で仲の良い律子に目配せした。律子も携帯片手に硬直していた。互いに視線を交えて、携帯画面を見比べる。
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