第1章

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3年付き合っている彼氏の圭太からスマホにメールが届いた。 「今の関係を終わりにしたい。」 「明日の夜、会って話をしたい。」 「いつもの店で待ってる。」 メールを読んで愕然とする。 ヤバイ! どうしよう。 浮気がバレたんだ!! 彼の親友のユウスケ君との事。 軽い気持ちで一回だけのつもりが、なんか今も続いてる。 完璧に隠せていると思っていた。 涙が頬を伝う。 手が震える。 どうしよう。 どうしよう。 別れたくない。 別れたくない。 どうすれば許してくれるだろう。 愛しているのは圭太だけ。 でも、圭太は絶対に許してはくれない。 どうすればいいか考えなきゃ。 考えなきゃ。 愛しているのは圭太だけと信じてもらわなきゃいけない。 …。 翌日。 待ち合わせのいつものbar。 いつもの席に座っている彼。 店に入った私を見つけ、彼は立ち上がり軽く右手を上げ、笑顔を向けた。 私も彼に答えるように笑顔をむける。 手にもった、"精一杯の圭太への誠意"を掲げて。 …次の瞬間。 圭太の顔の表情は硬直し、一瞬で恐怖の色に変わる。 店が騒然となり、悲鳴があがる。 震える圭太の左手から何かが落ちた。 小さな箱だ。 床に落ちた拍子に箱があいて何かが転がった。 それはキラリと輝く小さな石がついた指輪だった。 圭太の店に入った時の笑顔の理由。 今の関係を終わりにする理由。 圭太が持っていた転がった指輪の理由。 私は何か重大な間違いを犯したのではないか? 急に力が抜け、するりと私の手からソレは落ちて鈍い音がして転がった。 絶望と共に、私は足元に転がったソレを見る。 私の"精一杯の圭太への誠意"のはずのソレの鈍く光る目も絶望と恐怖で私を見ていた。
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