第二章

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 いつの日かのようにクマをこさえて登校すると数少ない友人らに心配されてしまった。  しかし事情を知っている木暮だけはニヤニヤしていた。  この前の光景を、性別は伏せながら上手いこと木暮に言うとニヤニヤしながら「世の中には略奪愛なんてのがあるんだぜ?」と言ってきたのは衝撃的だった。  恋愛初心者にはハードルが高すぎるし、相手が迷惑に思うことはしたくない。 「まあ、そんなに気になるなら本人に聞くのが一番だぞ?」 「そうだな・・・」  肯定はしたものの、どうやって聞けば良いんだ。いついつどこどこで女性と歩いてましたよね?恋人ですか?なんて聞いた日にはストーカーと勘違いされてしまうかもしれない。しかし、彼がそんな勘違いをする人間だとは思えなかった。  自身に渇をいれ、今度来る休日に例の図書館に行こうと決めた。 ・・・・・・・  待ちに待った休日である。  意気込んで図書館を目指すが足取りは重く感じた。  もし本人にこの前のことを聞いて避けられたり嫌な顔をされたらきっと立ち直れない。  恋人がいる事実よりもよっぽどそっちの方が嫌だった。  図書館へ着くと一ヶ月前まで専用の席だと勘違いしてたほど慣れ親しんだ席に向かう。  彼は既にいるだろうか。  ドキドキしながら本棚から少し顔を出して伺ったが人の気配すらない。  どうやら今日はまだ居ないらしい。  漸く冷静になれた気がした。  今まで読めなかった分を取り戻すかの様に読書に浸った。  そして気がつくと窓の外はもう暗くなっていて、斜め前の席に彼は居なかった。  今日はもう閉館間際だから来ないだろう。  そう結論付けて読み途中の本を借りて帰宅した。  帰宅してすぐ、パンツのポケットに入れていたスマートフォンが震えた。  画面を見ると木暮だった。  普段電話なんてしてこない彼だから何かあったのかと思い少し早い動作で電話にでた。 「やーほー!」 「は?」 「え、どうしたの?」 「電話なんて珍しいから何かあったのかと・・・」 「え、心配してくれたの?」 「いや別に。」  スマートフォンの向こうから聞こえる声は心配損をするくらいには元気だった。  用件を問えば片思いの相手には会えたのかどうか、というもので木暮も大概心配性である。
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