第二章

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 翌日の日曜日も、同じ時間に入館して最後まで居たが結局彼は来なかった。  もしかして避けられてる?  そんな思いが脳裏をよぎった。  しかし始めに避け始めたのは自分なのだから何もいえない。  もやもや煮え切らない気持ちを抱えながら更に一ヶ月が過ぎた。  今日から期末テストである。  あの男と出合ったのもテスト期間だった事を思い出した。  毎日、というわけではないが本を読みに行くという口実で自然とあの男を捜していた。なんて浅はかなんだ。そこまでしてあの男に会いたい自分に少し呆れ始めた。 「あ・・・」  どうせ今日は平日だし居ないだろう、とたかをくくっていたら、居たのだ。いつも自分が座っている座席の斜め前に。  その姿を目にとどめると心臓が痛いくらいに騒ぎ始めた。厄介だ。  平静を装い何とかいつも座っている席に腰を落とした。  そこでやっと本に注がれている視線がこっちにむいた。  目があうとどきん、と大きく心臓が奮えた気がした。 「こんにちは。」 「こんにちは。久しぶりだね。」 「そう、ですね・・・」  ぱたん、とそっと本が閉じられた。どうやら話をする体勢のようだ。 「もしかして、避けられてた?」 「何で、そう思うんですか。」  正にその通りだったが声を大にして言いたい。それはお前もだろう!と。 「サイン会から全然会わないから。折角仲良くなったのに寂しいじゃないか。」 「・・・・・・」  その言葉を聞いて一気に顔に熱が集まった。この図書館はこんなに暑かっただろうか。  そこで木暮の言葉を思い出した。目線を逸らすな、そう自分を律した。 「ちょっと学校の方が忙しかったんです。」 「はは、そうだったんだ。良かった。」 「そういう貴方こそ、最近来てませんでしたよね。」  気になっていたことの一つだった。  さっきの言葉を聞く限りじゃ避けてはいなかったんだろうが何故一ヶ月も姿を見せなかったのか気になった。 「あー、仕事で企画任されてね。でもやっと終わって休み貰ったから来たんだ。」 「っ、てっきり避けられてるのかと。」  心に圧し掛かっていた重りが減った気がした。 「今日は学校終わるの早いね。」 「テスト期間なんです。」 「そっか。勉強するの?」 「しませんよ。」  そう言うとどこか目を輝かせすこし身を乗り出してきた。何を言われるのだろうか。
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