54人が本棚に入れています
本棚に追加
案の定、まだコートにいた平沼先生。
部室の鍵を開けてもらうために声をかけた。
「すみません、練習着忘れたので、鍵を借りてもいいですか?」
「大島、走ってきたのか?汗だくだな」
自ら壁うちをしていた先生が、
笑顔で鍵を渡してくれた。
「……ありがとうございます」
厳しい練習中とは違い、
27歳の平沼先生は爽やかな空気を作り出し、
15の私の心をピンク色にしてしまう。
「じゃ、お先に失礼します。」
「気をつけて帰れよ」
「はぁい」
堅物なわたしは、
先生とフレンドリーな会話ができない。
部活動の事以外は、話しかけることさえできなかった。
" つまらん思春期だ "
中学生でも、彼氏彼女がいる子たちは結構いるのに、
私は、叶わぬ恋を誰にも言えなくて、
こうやって中学生活が終わっていくんだと思っていた。
PM 7:05
学校を出た頃は、すっかり薄暗くなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!