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始業予備チャイムが鳴り、
トイレから出て廊下で話を続けた私たち。
「由美は、一年のときイジメられてたんだよ。クラスの女子に、で、不登校だったの」
「え、そうなの?」
……確かに
今よりも学校で見かけたことは無かったかもしれない。
「前田が声かけてくれなかったら、
きっと私、今、学校来てないよ」
「………………」
そう言って、笑う由美を見ていたら
なんだか
抱き締めたい感情が湧いてきた。
「大島さんは、いつもセカセカ動いてるよね、
いつも忙しそう…」
直也は、きっと
由美のこんな所を好きなんだろうな………
「大島!」
廊下の私達の前に、
テニス部の平沼コーチが近寄ってきた。
「授業始まるぞ!さっさと教室に入らないか」
私に"友達を選べ"、と言ったコーチ。
「……はい」
「平沼ウルサい、あいつ、大っきらい」
分かれて教室に入ろうとした由美の腕を、
そのコーチが
ゴツゴツした手で掴んだ。
「お前は、待て、
話がある。」
平沼コーチはテニス以外でも、
生活指導でも厳しく怖がられていた先生だ。
なまじ整った顔がよけい、冷淡なイメージを与えていた。
平沼コーチは、
嫌がる由美を図書室に引っ張って行った。
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