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暑くてうだるような体育館で、
更に蒸すような密集した塊ができる。
「杏!」
杏を取り囲む男子生徒の間を割って、
私は気を失った彼女のそばに近寄る。
「大島、どけ」
その私を押しのけて、
杏のおでこに手を触れたのは………
警察署から戻ってきた平沼先生だった。
「斉藤先生!救急車呼んでください!」
………何をしても
今のわたしには、
先生が偽善しているようにしか見えなくて……
「………なんだ?大島………その目は…」
平沼先生が杏に触れているその手が
とても汚いものに思えた。
「小林くんたちを
追いつめないでください。」
ざわつく体育館に、
私の願いはかき消されていく。
「平沼先生!救急隊来ました!」
先生は
杏の綺麗な寝顔しか見ていなかった。
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