心……-2

6/32
37人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「ん、やめた」 小林くんは、いつの間にかガムを口に含んでいて、風船を私の前で作る。 「どうして?長生きしたくなったの?」 「早馬、せこっ!一人だけ健康になるつもりかよ?」 プツン!と風船を割った小林くんは、 「タバコの煙、爺ちゃんに悪いらしいし、 あと願掛けな!」 私にもガムを一枚渡す。 「ありがとう、………なにを願ってるの?」 炎天下の病院は、 青空の下、ユラユラ揺れて見えた。 「内緒!」 小林くんは、 また、冷たく見える端正な顔をクシャリと笑い崩して、 振り返って、 パン! と最大級のガム風船を、私の前で割って見せた。 「ちょっ?!破片、顔に飛んだ!」 「記念にとっとけ」 「はぁ?」 ……小林くん…… あなたの叶えたいことは、 一体、なに? 「由美、今日 直也は何で一緒じゃないの?」 前田さんは 少し聞きづらそうだ。 「病院、お化け出そうだから嫌いなんだって」 「あいつ、霊感ゼロじゃねぇか」 「杏の病室、 保健の先生が三階だって言ってた」 小林くんは、汗だくになったシャツを更にバタつかせながら、 「うわ、俺汗くせ!」 「安心しろ、全員だ」 「由美くさくない」 みんなより先に 303の病室の前に立っていた。 なんか、ちょっとだけ、緊張してる? 「杏」 私たちに気付いた嬉しそうな杏の声 「早馬!由美!亜子!」 「崎谷くんとデカ田もいます。」 そっか、 小林くんの願いって、 「見舞ってくれるんですか?」 「ちょっと言い方おかしくね?」 ………"杏"のことなのかもしれない……… わたしは、 病室の一番、隅っこから 動けないでいた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!