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「杏は、どこが悪いんだよ?」
小林くんも、汗の匂いを気にしてか、杏のベッドから少し離れて立っている。
私の目の前にある、
小林くんの首筋に
ホクロが並んでるのが見えた。
「お母さんが医者から聞いた話では、
検査の結果は特に悪くないそうです。」
病院の寝巻き姿の杏は
いつもより、さらに細く見えた。
「じゃ、なんだろな、
杏ちゃん、集会で熱中症にでもなったんじゃね?」
崎谷は、
可愛い杏の表情に見とれるかのように、視線を外さないまま、
ベッドそばの椅子に1人座りだした。
「レディファースト!
で、いつ退院すんの?」
そんな崎谷を押しのけて、前田さんがその椅子に座っている。
いす取りゲームみたい……。
「金曜日には退院しますよ。」
杏はにこやかに笑ったあと、
病室の窓の外をチラリと見た。
「雨が降ります。」
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