41人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
小林くんの治療中に、
再び私達の元に戻ってきた祐紀さんは、
付き添った直也以外の人間を車に乗せて、
「杏ちゃんは、どこが悪いの?」
先に送る彼女に、身体の事を聞いていた。
記憶障害から、心療を勧めた祐紀さんは、
杏の心に問題があると思っている。
「特に問題ないそうです。」
「いつも思うけど、日本語達者だな、日本語いっぱい勉強した?」
「お父さんが家で英語と日本語半々でした。」
「杏ちゃん、ずっと、日本にいるんだよな?」
祐紀さんの隣に座った崎谷が口を挟んでいる。
「そのつもりでいます」
「………………」
………私は
なんて、
嫌な女なんだろう……?
杏が、アメリカに帰ってしまうことを、
心のどこかで期待している。
夕方6時のサイレンが、公営の住宅地に響き渡るころ、
祐紀さんの車は私の住む団地に着いた。
「また、病院戻るんですよね?」
最初のコメントを投稿しよう!