あやとり

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崎谷を送り届けたあと、 祐紀さんの手招きで助手席に移動した私。 言葉は冷静に出ても、やっぱり まだ緊張してしまっている。 「戻るよ、早馬、保険証も失ってるから治療費ハンパないはず…… 亜子ちゃんの住んでる棟結構古いな。 何階?」 祐紀さんは、アパートを見上げる。 「五階です。」 「ふうん」 そして、少し考えて 数十メートル車を移動させて 棟に背を向ける形で駐車し直すと、 「これで、死角に入った。」 今日、 初めて感じる大人の香りに、 身体はちゃんと反応してしまっていた。 …………拒絶を表す、 祐紀さんと自身の身体に挟んだ右手。 だけど 顔は、 唇は 背くことができない。
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