41人が本棚に入れています
本棚に追加
崎谷を送り届けたあと、
祐紀さんの手招きで助手席に移動した私。
言葉は冷静に出ても、やっぱり
まだ緊張してしまっている。
「戻るよ、早馬、保険証も失ってるから治療費ハンパないはず……
亜子ちゃんの住んでる棟結構古いな。
何階?」
祐紀さんは、アパートを見上げる。
「五階です。」
「ふうん」
そして、少し考えて
数十メートル車を移動させて
棟に背を向ける形で駐車し直すと、
「これで、死角に入った。」
今日、
初めて感じる大人の香りに、
身体はちゃんと反応してしまっていた。
…………拒絶を表す、
祐紀さんと自身の身体に挟んだ右手。
だけど
顔は、
唇は
背くことができない。
最初のコメントを投稿しよう!