あやとり

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「夏休み前から、三者面談あるから、希望日に記入して提出するように、保護者の方にちゃんと見せるんだぞ」 担任が、 ……きりとりせん…… の付いたプリントをみんなに配布した。 「俺、小学校んとき、 " きりとりません" だと思って、いつも切り取らずに提出してたわ」 「早馬って、はやとちり」 「だから"早"馬なんじゃね?」 教室の隅から、小林くんの声が聞こえると やっぱり、安心してしまう。 「いよいよ、進路決めなきゃだなぁ」 ……もうすぐ夏休み… あっという間の一学期だった。 「亜子、夏期講習おんなじ曜日にしてくれた?」 同じ塾に通う一希ちゃんは、 私と同じ高校に進みたいと言っている。 わたし 高校でたら、専門学校か就職したいんだよね。 家庭は、けして裕福じゃない。 休み時間、 ぼんやり、 進路なんか考えてなさげに、 廊下で座り込む小林くんを見ていると、 「くち、お口あいてますよっ!」 目が合って 「うるさい」 また 少し、幸せな気持ちになった。 その小林くんの隣には 杏がいたのだけれど………
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