あやとり

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「杏は、夏休み、アメリカ帰らないの?」 由美と崎谷も、小林くんと杏のそばに近寄っていく。 「多分、二週間くらい帰ると思います。」 そんなみんなに、私だけが近寄れない。 「あんな風にトイレ前にたむろされてたら、行きづらいよね」 小林くんたちを、 表面上は、煙たがっている女の子たちも、当然いる。 …以前の私のように。 「大島!」 職員室から平沼先生が私を呼ぶ。 由美の件があってから、ずっと避けてきた。 「テニス部から、商業高校に1人、推薦できるぞ」 軽蔑さえ抱き始めた先生から 進路後押しの話が舞い込んできた。 「…………私でもいいんですか?」 中総体で好成績を残せなかった私でも………? 「お前は、真面目で努力家だから、俺のイチ押しだ」 「……………」 わたし 真面目だけが取り柄だったからなぁ……… 「しかし、5教科平均が他の部員より下回ってるから、夏休みに挽回しろよ?」 まるで担任のような口振りの先生……。 「塾で頑張ります」 先生は、うちわを取り出して扇ぎながら、 「夏休み、火曜日木曜日に数学の補習やるから出てこい」 「え」 職員室の窓から見える生徒の影を視線で追っていた。 「転校生も誘ってやれ、 あの子も日本で進学するんだろうから」 廊下には、 小林くんと杏がいた。
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