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「また この子か、意識は?」
職員室から出てきた平沼先生は、
しゃがみこむ杏の顔をのぞき込むようにして見た。
「今日はあります。」
貧血だったのか、杏の唇の震えが気になった。
「お母さんは、家にいるのか?」
今日の平沼先生は、
テニス部の時の指導のように、
キビキビとして、
由美に何かしでかしたハレンチ教師には見えない。
すこしは、こりたかな?
「家に電話するから、
何番だ?」
校舎の影ができた、水道の所に杏を移動させ、
先生がメモをとろうとしていたけど……
「………電話……わからない」
また、
記憶障害が出てしまっていた。
身体まで震えていて
ほんとに可哀想だった。
「………ど忘れしたのか?大島、お前知らないのか?」
私が首を横に振ると
先生は、
「困ったな、生徒情報誌教頭が鍵付き棚にしまってるんだよな」
と考え込んでいた。
「………杏、寒いの?」
「大きな音や、追いかけられたり、そんなので
たまに、すごく怖くなって
自分でどうしようもなくなります……」
杏の震えは止まらない。
初めて、杏を見つけた花火大会の日。
もしかしたら、
ほんとに杏は、
UFOに襲われたんじゃないかと
そんな気持ちになるほど 時々、杏は不可解な身体になる。
「あ、養護の先生が戻ってきた、ちょっと待ってなさい」
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