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「杏、着いたよ」
私のナビで杏自宅にたどり着いて、
平沼先生は彼女を支えながら自宅の中に入っていく。
平沼先生の車は、冷房が効かないのか、
とても暑かった。
後部座席から降りて
杏の自宅前をのぞき込むと
先生と話している彼女の母親が私に気付いて、
中から
"トウモロコシ"を
袋いっぱいに渡してくれた。
「実家から送ってくれたのよ、
あなた、トウモロコシ美味しそうに食べてたから」
バーベキューのときの事。
生のトウモロコシ、初めて見たかもしれない。
「彼女は、次の補習は来ないかもしれないって」
杏の母親に会釈して戻ってきた平沼先生が、私に助手席に乗るように言ってきた。
「後部座席は狭いし
エアコン壊れてるから暑いぞ」
「…………直さないんですか?」
先生らしからぬ赤いスポーツカーに
妙な、こだわりを感じた。
「俺は、この車の見た目に惚れたんだよ」
「…………」
二十代後半の平沼先生。
やっぱり容姿がいいものが好きなんだね。
ハンドルを握る先生が普通の男に見える。
「大島、ちゃんと勉強してるか?」
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