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「勉強……夏休みは塾三昧の日々です。」
なんとか、お金のかからない公立高校に行きたい。
「ああは言ったけど、
あんまり早くに根気づめると長続きしないぞ」
「………はい」
" どっちなんだよ?"
と突っ込みたくなる口を噤み、
小林くんが言ってくれた言葉を思い出しながら、
最近、雨を降らせない空を助手席窓から見上げた。
__" 大島は看護師が向いてるよ "
………こんな私だけど、
「最近、大島は、大人っぽくなったな」
「え」
「また、背が伸びたか」
「それは、ないです」
誰かの助けになる仕事をしてみたいと、思わせてくれた、同級生。
「恋をしてるんじゃないか?」
…………こんなに、
気持ちが近づけるなんて思わなかった、
異世界の住人だと思っていた人。
「……あ、そこの信号を右折します……」
先生が先生らしからぬ発言をするから、
声が緊張で震えそうだった。
「…………俺は、
大島の気持ちには気付いてたよ。」
「………え………」
信号待ち………
平沼先生の左手が、私の右手に触れて
自分の身体を硬直させているのが分かった。
「一年の時から、
俺ばかりを見ていただろ?」
先生 らしからぬ男の手が、自分の膝に触れた。
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