螺旋

7/12
前へ
/12ページ
次へ
「勉強……夏休みは塾三昧の日々です。」 なんとか、お金のかからない公立高校に行きたい。 「ああは言ったけど、 あんまり早くに根気づめると長続きしないぞ」 「………はい」 " どっちなんだよ?" と突っ込みたくなる口を噤み、 小林くんが言ってくれた言葉を思い出しながら、 最近、雨を降らせない空を助手席窓から見上げた。 __" 大島は看護師が向いてるよ " ………こんな私だけど、 「最近、大島は、大人っぽくなったな」 「え」 「また、背が伸びたか」 「それは、ないです」 誰かの助けになる仕事をしてみたいと、思わせてくれた、同級生。 「恋をしてるんじゃないか?」 …………こんなに、 気持ちが近づけるなんて思わなかった、 異世界の住人だと思っていた人。 「……あ、そこの信号を右折します……」 先生が先生らしからぬ発言をするから、 声が緊張で震えそうだった。 「…………俺は、 大島の気持ちには気付いてたよ。」 「………え………」 信号待ち……… 平沼先生の左手が、私の右手に触れて 自分の身体を硬直させているのが分かった。 「一年の時から、 俺ばかりを見ていただろ?」 先生 らしからぬ男の手が、自分の膝に触れた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加