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「おじいさん、まだ入院してるの?」
頭の中に、若い綺麗なお母さんが浮かんでいた。
小林くんと同じように、彫りの深い横顔だった。
「流れ込んできた流木で身体打たれちゃって
背中がヒドいんだよ。
もう、船 乗れないかもな」
" 早馬丸 "………
船も損傷ひどかった。
「小林くん、もしかして漁師になりたい、とか思ってる?」
公園に差し込む日光が真上からになって、
ベンチに座る私たちをヒリヒリと照りつけ始める。
「………わからない、遊びで船には乗ったけど
漁師になるなら、早くから決心しないと出来ないみたいだし。
船があれだからなぁ」
「…………あぁ…」
大変だ。
私のように、
餌を見せられ
推薦の枠をただ、指をくわえて欲しがっているのとは、
ワケが違う。
「大島、祭りの日迎えに行くよ」
「え、あ、杏は?」
私は、平沼先生に
従順な犬に成り得ると、見透かされている。
「勿論一緒だよ。」
「…………」
「日陰なくなったな、せっかく、色白になりかけてるのに…………そろそろ移動しようぜ」
そう言って
小林くんが立ち上がったときに、
ポケットからポケベルが落ちてしまう。
「あ、おニュウが」
それが、
私の太もも部分に落ちて拾い上げようとした、
小林くんの手が少し、触れてしまった時
「!」
平沼先生の黒い日焼けした手を思い出してしまった。
「わり、触れた?
そんな、めちゃくそビビんなよっ…………?
あれ……大島?」
私の足から上へ滑らせる、
大人の手を
思い出してしまう。
「………ポケベル持ってたんだね」
祐紀さんに触れられた時は、
ただ
ドキドキしただけなのに、
「………おう、お前もこっちに連絡入れていいぞ……てか、
顔色わりーぞ」
人の思いだけは敏感に感じ取って、
心の無いスキンシップは受け入れがたいはずなのに………
「わかった、祭りの日 連絡するね」
「あ?あれ、そんな怒って帰んなよ」
私はきっと、また
平沼先生には、何も言えないんだ。
「祐紀にいに、チクんじゃねーぞー」
………奥歯の親不知のところに、トウモロコシの粒が挟まって
とても
気持ちが悪かった。
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