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「由美はおろす気なんですか?」
私の進路の悩みより、何倍も重い、
一人ではけして解決できない問題。
「おろすしかないじゃん」
意外な祐紀さんの言葉に、
私は思わず、
冷静にタバコを取り出す、その二十歳の男の横顔を見る。
「…………そんなこと……」
中絶手術なんて、簡単に考えている男の人が世の中には沢山いるって、聞いたことはあるけど。
………まさか
私達にあんなに優しかった祐紀さんから
そんな固定観念丸出しの言葉が出るなんて思わなかったから
ちょっと、驚いた。
「ガキがガキ、育てられるわけないじゃん、直也が一番悪いのは確かだけど。」
そう言って、取り出した煙草をまた仕舞い込んだ祐紀さんは、
私の住むアパートを少し見て
車を走らせた。
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