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______″ 口止め料 ″
祐紀さんは、
私の中に、小林くんがいることを知っている。
私が、
弱く、小さい人間だということも、
…………__分かってるんだ。
私は、
今度は自分の唇で、
祐紀さんの口を封じている。
____三回目のキス______
祐紀さんの身体の匂いに包まれながら、
その力強い腕の力に、
心地よくなって 脱力しそうだった。
「何で、いつも嫌がらないの?」
私の耳元に響く裕紀さんの声は、
すこしだけ、
小林君の声に似ていて
「…………いつも、嫌じゃないんです。」
すこしだけ、
「亜子ちゃんは、
優しいな………………」
____震えているような気がした。
「………………一美も、優しい娘だった」
裕紀さんの心の曇りを、
少しでも、晴らすことができるなら、
こんなに、温かい抱擁くらい、何回も受け入れられるような気がしていた。
「一美さんの話は、封じておきたい?」
暑い夏の夕方なのに、
密着された、上から感じる重みは
けして嫌じゃなくて、
「いや…………そんなことはないよ」
むしろ、今までのキスの何倍も親近感が増している証拠に、
「一美さんの死が 、祐紀さんを更正させたの?」
発する言葉から、
いつの間にか、″ 敬語 ″ が消えていた。
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