32人が本棚に入れています
本棚に追加
「うちの病院、救急ではないけど、どうしたの?」
電話の小林君の声が焦っているように聞こえた。
「従業員の若いのが盲腸かもしれなくて」
「……わかった、先生に聞いてみる」
私は外来の医師に連絡をいれ、受け入れOKの確認をとり、
すぐさま、小林君とその病人がうちの病院を訪れることになった。
「大島さん、花坂さん病室、入院準備できたそうです」
知り合いの外来まで様子を見る暇などないまま、中学生の心臓病患者と初対面。
「暫くお世話になります」
「看護師の大島です。何かあったら、コールすぐ押してね」
挨拶も早々、
「お母さん、先生くる?」
勉強熱心な環ちゃんは、母親に家庭教師の来院を確認していた。
「夕方には、こられるわよ。
ここ、面接時間、夜9時迄でしたっけ?」
「ええ、そうです。夕飯後の検温が終わるのが7時ですから、あまり時間ないですけど……」
品のある親子、学校は、私立の女子中学校らしかった。
「はやく、杏先生、来ないかな」
環ちゃんの言葉に、
病室を出ていこうとした、わたしの足が止まる。
_____″杏″…………?
最初のコメントを投稿しよう!