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「杏先生の英語、学校の先生より分かりやすいよ」
環ちゃんとお母さんの会話が耳に残る中、私は、ドキドキしながら外来の方へ降りていく。
…………もしかしたら…………
「あ、亜子!」
外来の待ち合いに、小林くんがいた。
「やっぱ、虫垂炎で明日手術に決まったよ!」
「…………そう、その人、地元の人?」
環ちゃんの薬を外来へ取りにきた私は、
先ほどの会話が、頭の中をエコーし続けて、まだ、ぼんやりしていたのか、
「……いや、福岡のやつだから俺が付き添い…………って、
どうした?顔がへんだぞ」
小林くんの話に反応が遅くなる。
「…………顔は生まれつきだよ」
「………なんだよ…?もっと、怒ってくんねーとつまんねーな。
見た目悪い奴だけど、悪さはしないと思うからよろしくな」
「…………うん、私、担当じゃないけど」
「そーなの?ますます、つまんねー」
「……つまんねーって……」
…看護師、何人いると思ってんのよ?
「忙しいのに、ありがとな」
小林君は、私の制服の名札をチョンと触って、
「今度、それ、家で着て出迎えてよ」
と、耳元で囁くからぼやっとした変な顔は、一気に赤く熱くなってしまった。
「コスプレ好き?!」
「まぁな!」
笑いながら、外に出る小林くんのツナギ姿。
今日は、現場に出ていたんだね。
…………その好きな背中に、言えなかった、
ひとつの可能性。
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