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「早馬…………」
病院の廊下で、まるで、ドラマに出てくるかのような美しい姿をした二人は、
再会の感動で、声さえ震えているみたいだった。
「…………何で、日本にいるなら、連絡しないんだ?俺、何回も手紙書いただろ?
元気なのか、病気は治ったのか、
…………生きているのか…………
何回も、書いて送っただろ?
何で返事よこさねーんだ?」
小林くんの目は、濡れて、ますますキラキラしてる。
「……ごめんなさい。手術は成功したけど、完治には時間がかかってしまって、しばらくは記憶も曖昧だったの」
記憶を司る神経部分に腫瘍ができてしまっていた杏……、
昔も、記憶がよく飛んでいたっけ。
「そっか、治ったのか、そっか……」
杏の書いた手紙を大事に持っていた事で、離婚にまで発展してしまった小林くんは、ホントに嬉しそうだ。
「じゃ、俺、盲腸野郎んとこ戻るから」
杏と私に手をふって、廊下を曲がっていった。
「……びっくりしました」
杏は、その姿を見届けたあと時計を見て
「私も行かなきゃ」
と、ニッコリと笑って歩いていく。
「………………」
劇的な再会______
杏が元気でいてくれて、ホント に嬉しかった。
…………なのに、
小さな波が絶えず押し寄せるように
私の心の中は、
ざわめきが消えることはなかった。
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