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「早馬、よかったの……?」
助手席の杏が、先程から継続して浮かべる何か言いたげな表情は、
自然と俺の心を穏やかにさせてくれる。
「なにが?」
「亜子、祐紀さんとデートしちゃうよ」
「……………………」
やっぱり、
昔から、あいつが何を考えているか、いまいち分からない。
__だけど、
「人のことより、自分の心配しろよ
検査終わるまで病院いるから、隅々まで調べってもらってこいよ」
正直、俺は今は
また再発してしまうかもしれない杏の病のことで頭がいっぱいだった。
「………………時間かかるし、
1人でも大丈夫なのに」
「今日、現場夜間だから、俺の時間は大丈夫。それに
1人なら、受けなかっただろ?」
____″ 直也 ″
父親になって、何度も死の縁から帰ってきた。
もし、今の杏に、
「…………亜子が早馬を好きでも、
それでも、
祐紀さんに委ねるの?」
誰かの ″ 愛 ″ が必要なら、
「…………お前、日本語上手くなったな。
…………着いたぞ」
俺は、惜しみ無く、それを注ぎこむ。
「早馬は、気持ちを隠すのが上手になったのかな?」
「………………」
それが、
優しい亜子が望んだ形なら____
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