小林くんの愛 亜子の愛

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「放射線科…………?」 俺が拾った診察予約カードに、確かにそう書いてあった。 ………………杏。 杏はそのカードを無言で受けとると、俺の顔を見ないまま精算を済ませて、 「ここから、タクシーで帰るから、早馬は仕事に行って」 俺を置いて外に向かって行く。 「杏!」 ____″ 昔とは、みんな違うから ″ そうだよ。変わってないようで あの頃とは、何もかもが違う。 「ちゃんと、家まで送るって!」 1人っ子で、両親が不仲だった俺は、早く家庭を持って、子供沢山作りたいってそんな夢があったのに、 「杏!」 結局、家庭を守れなくて、 俺は後戻りのできない独り身だし、 「早馬……」 やりたかった仕事も順調なようで、 工事一つ取るのに、いっぱいいっぱいで 時々、限界さえ見ることあるし 「ほら、車に乗れって……」 「……優しいのは、どうして?」 「え?」 純粋に杏を好きだった昔の俺は、 もう、いなくて………… 「…………同情が一番つらいよ」 今はいない親友の面影と、 過去に ちゃんと出来なかった、 誰かを支えるという、 男としての自己満足に近い欲望が心の隅に確かにあって、 「同情じゃな いよ……」 亜子も、 杏も、 傷つけたくないのに、 「…………じゃ、 早馬は、病気の私に昔のようにキスができるの?」 大人だからこそ、 二人の傷を同時に癒すことはできない。 「できるよ」 俺は、 杏を1人ぼっちにすることなんかできない。
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