17人が本棚に入れています
本棚に追加
「さて、今から戻って労働するかな」
洋食屋を出る頃は、二時近くになっていた。
祐紀さんは、車に置いていた携帯電話の沢山の着歴にウンザリした顔を浮かべて
「貧乏暇なし」
と、苦笑いをする。
「保障って、月にどれくらいなんですか?」
聞いてはいけないような気もしたけれど、
祐紀さんがそれで、一生、独身を貫かなきゃいけないのも、とても理不尽だと思うし、
誰にでも、
幸せになる権利はあるのだから、
「……相手がケガする前に得ていた月給位だよ」
自分にできることは、何かないかとも思った。
「その人は、寝たきりなんですか?」
「いや、通院はしてるけど寝たきりじゃない。運動神経が少し、……後遺症がね」
「………リハビリとかはされてるんですか?」
「どうかな?わからないよ、こっちに住んでるわけじゃないし」
「………………」
祐紀さん、損してなきゃいいな。
「今日ありがとな」
「あ、いえ」
「せっかくの休日、むさ苦しい所で雑用させて。でも、また、手伝ってくれたら助かるよ」
「オイル交換しましょうか?」
「それより、洗車がいいな ……あ」
「え?」
「また、早馬の車に遭遇」
私を乗せた 、祐紀さんの車は、
いつの間にか
総合病院の駐車場脇の細い道を通っていた。
「ほんとだ、小林くんのマジェスタだ」
見ると、
確かに
やっぱり、小林くんの隣に杏が座っていて
「なんだよ?あいつら、
あんな所でラブラブだな」
「…………!……」
二人は、
キスをしていた。
最初のコメントを投稿しよう!