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「……あんな所で盛り上がらなくてもいいのにな」
あの二人のキスしているところ、
見せつけられるのは、何回目だろう?
「…………そうですね」
自分からそうしてほしいと、小林君を突き放したくせに、
やはり、
ツラい。
「………………やっぱ、あれか」
「え?」
「昼から急に元気なくなった理由」
「………違いますよ」
現実を見ないように生きていくのは、
簡単なことじゃない。
「変わってないなぁ、そういうところも」
受け入れながら、成長するのは 試練を重ねた人だからこそできるもの。
「…………なにがですか?」
そう、
私は、中学生の頃から、変わってはいない。
「早馬のことを、とても好きだって、
そんなところ」
溢れそうな気持ちを抑えるのに、
「……………………」
昔は、支えてくれる人たちがいてくれたから。
「亜子ちゃん……」
自分の会社の駐車場について、車を止めた祐紀さんは、隣に止めてある私のボロボロの車をチラリと見る。
「幸せは、
自分から、離しちゃだめだよ」
今、
私の気持ちを話せる人は、
いないから……
「俺は、修理なら、いつでもしてあげられる からさ」
祐紀さんの優しさに、
心のふたが、
外れそうになる。
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