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今日も、私より少し先に帰宅していた祐紀さんが、簡単にパスタを作ってくれていた。
「……うん、あんまり」
美味しいのに喉に通らない。
「ペペロンチーノじゃなくてタラコにすれば良かったかな?」
「どっちも好き……」
気を使わせたうえに心配までかけてしまった。
私は、水で流し込むように口にする。
「固めにゆでたからちゃんと噛めよ」
子供みたいな注意を受けながらそれでもなんとか完食した。
「前田と崎谷が車持ってきたよ」
お皿を洗う私の横で、それを受け取り拭きながら祐紀さんは嬉しそうに言った。
「あ、車検?二人で?」
「あの子、変わってねーな、あいかわらずヤンキーみたいだった」
「うん……そこがいいんだよ」
祐紀さんが、亡くなった弟の友達と仲良く接することは、私にとってはとても嬉しいことだった。
二人の共有の思い出も色褪せたら嫌だから。
「崎谷が、今度飲みに行こうってうるせぇから土曜日、行ってくるな」
「うん、私どーせ夜勤だから」
…………この人には言えない。
「日曜日休みだよな?どっか行こうか?」
「夜でもいい?」
不倫の代償が、今大きくのしかかってることなんて、
「おう、夜の長崎満喫しようぜ」
優しい笑顔を見たら、言えなくなった。
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