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土曜日、
夜勤明けに自宅に戻ると、
珍しく酒臭い祐紀さんがソファーで眠っていた。
『もう夏じゃないのに……風邪ひいちゃう』
あんまり飲む人じゃないのに、
能天気な崎谷と一緒で楽しかったのかな?
祐紀さんに綿毛布をかけながら、
その寝顔を見て幸せな気持ちになった。
そうだ。
映画を見に行って、この人、寝ちゃってたんだよね。
……確か、あのときも こんな風に穏やかな顔をして。
____突然会わなくなって、
もう、見ることはないんだと思っていた。
直也が亡くなって、
葬儀の時に見かけた祐紀さんは、
全てを失ったような顔をしていて
私とも、
もう繋がることはないんだと感じてしまっていたから。
「…………隣、いい?」
温かくなった毛布のなかに、
祐紀さんの胸に覆い被さるように、狭いソファーの上で眠る。
「…………亜子……?」
いろんなものを失って、それでも再起した人____
強さは、小林君にも、似ている。
「……夜景楽しみにそれまで、ずっと こうしてる……おやすみ」
私は祐紀さんの細く硬い身体を……
「…………ずっとは、俺がいろいろ持たないかも……」
祐紀さんも
、昔より痩せてしまった私の身体を抱き締めて
「うん…………夜まで…長いから……」
優しい朝日に見守られながら、
二人、
お互いの優しさと、
生きている体温を確かめあった。
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