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「反対方面にもっと走らせたら、絶景の場所があるんだけどな」
祐紀さんは、昔のようなセダンタイプの車に乗ることはなくなった。
もっぱら、会社のワゴンタイプの乗用車を足に使っている。
「いいよ、長崎で…………
昔と同じ稲佐山で」
落ち着いてもなお、私にトキメキを与えてくれようとするこの人は、
やっぱり運命の人?
こんな素敵な人、そういない。
…………ノロケでもなんでもなく、
私なんかには勿体ない男性だと、ほんとにそう思う。
…………だって、
私は………………________
「ロープウェイ、夜はやってないのかな」
「展望台に上るだけでもいいよ」
やっぱり、山ノ上だけあって、風も吹くしとても寒い。
「寒くね?」「うん、もう、ガチガチ」
自販機のコーヒーなんて、ほんとに一時しのぎの温かさだと思う。
飲んだらトイレ行きたくなるし、
年をとると、
目の前の、キラキラした宝石箱を眺めるよりも、
それよりも生理現象を堪えることで頭がいっぱいになってしまって、
ロマンスもへったくりもなくなってしまっていた。
「これ、着れば?」
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