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「これ、着れば?」
寒さで震える私に、祐紀さんは着ていた厚手のシャツをかけてくれた。
「大丈夫、寒いのは、お互いさまだし」
返そうとすると、
「看護師が風邪ひいたら、仕事になんねーじゃん」
私の両肩に手をしっかり置いて、そのシャツを脱がせないように固定してしまった。
「…………ありがと」
「こっちこそ、ありがとう」
「え?」
寒さが和らいで、外の景色を、
吐く息で もやが一瞬かかる展望台から見る夜景を、キレイだと感じ始めたころに
祐紀さんは、
私の冷たくなった指をそっと掴んで、
「指輪はめてくれるようになったから」
胸元から、
本来収まるべき場所へ移動したリングを
嬉しそうに眺めている。
「うん、
もう、いいかな?って、
子供の時は自分にはもったいないような気がしてたから」
年齢だけは重ねて、
大人と、呼ばれるようになった。
「亜子は、今のままでいいの?」
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