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「お前、大丈夫?」
私を包むそのたくましい腕の持ち主は、優しく聞いてきてたけど…………
「……大丈夫よ」
逆に自分の持ち放つ魅力に自信を持っていてほしい、
そう思ってしまう。
「早馬、よく決意したな」
「うん」
崎谷から、聞いた時、以前のように胸がチクリとはしなかったのは、
「俺なら、直也と同じ病気の女と結婚まで出来たかどうかわからない」
「………………」
「なんだよ?黙りこんで。俺は正直過ぎるか?」
「意外だったから……」
優しいけれど、現実を冷静に捉えることができる、大人の大きさに包まれて、
今は安心感を充分に得ているから……____
「結婚はしなくても、
こうやって側にいることはできるからさ」
水面に見える、湯船の中の私の身体は、
震えているかのように波打って見えるけど
「………そうね、結婚だけがすべてじゃないもんね」
それは、
背後から抱き締められて、首筋にキスをされると
敏感に感じてしまう ″ヨワい ″ 私のせいで、
「………………亜子」
「ん?」
「こっち向いて」
人は愛されると自信を持てるものなのか、
「うん」
「風呂入るときは、指輪外したら?」
こんなに明るいバスルームで、
けして大きくはない胸をさらけ出せたりもする。
「………………そうね…………
ね…………
お風呂、上がるまで、我慢……してみて」
明るい照明の下の、恥ずかしくなるほどの優しい唇と舌の愛撫に
「我慢出来ないのは亜子のほうだろ?」
女としての幸せを、
感じることができるようになったから。
「……もっと、おしとやかな女だったのにな………わたし…」
更に揺れる、湯船のお湯の波を上半身に感じながら、
「そんな部分は、不燃物ゴミ出しの時に捨ててこい……」
私は、濡れた祐紀さんの頭を抱きしめて
「…………うん……」
形のない未来に対する小さな不安さえも、
快楽へと変えていく事ができる女になっていた。
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