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「こんにちは、環さん」
心臓にペースメーカーをいれる手術を行い、無事に、退院した中学生の女の子がナースステーションに遊びに来ていた。
「大島さん、杏先生と同級生なんだってね」
体調がいいのか、顔色がいい。
「うん、
一緒に勉強した期間は短かったんだけど」
「杏先生、結婚して福岡にいくんだよ」
既に知っている情報を、嬉しいような、
寂しいような表情で教えてくれる。
「…………素敵な旦那さんと、赤い糸で結ばれてたんだよ」
結婚なんて、ずっと先だと思っていた中学生時代。
その、同級生たちが、
既にその頃に運命の人に出会っていたのだとしたら、
とても、すごいことだと思う。
「私、杏先生みたいに英語の先生になってみたい」
夢は
まだ無限に広がるかもしれない青い時に
私は、出会いと別れを繰り返した。
「なれるよ、きっと。がんばってね」
命の危機に迫られた人ほど、言葉一つ一つが輝かしく聞こえるのは、
時間の大切さをわかってるからかもしれない。
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