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「おいっ!」
最近、この辺で飲み屋で働く女の子を狙った悪質な強奪事件が頻発していた。
今、目の前でそれを目撃。
例え前科がある身でも、見て見ぬふりはできない。
「女をはなせ!」
俺の怒鳴り声を聞いて、
自転車に乗ったニット帽を深くかぶった男は、女が手放さなかったバッグを諦めて
そのまま走り去って行った。
「………………大丈夫か?」
顔を殴られても、持っていたシャネルのバッグを放さなかった女は、
ケガした頬を隠しながら、
俺をゆっくり見上げた。
「…………大丈夫」
「………………」
27、28歳位だろうか?
色が白くて、清楚な顔をした女だった。
茶髪がもったいないほど、透けるような肌。
「あんな時は荷物は放してしまった方がいい、女なんだからケガしてしまうぞ」
俺が手を貸そうと差し出すと、
「あのバッグいくらすると思ってんのよ?
余計なお世話……」
その手を無視して、ゆっくり立ち上がって、
フラフラと歩きだした。
『小娘じゃあるまいし、礼も言えねーのかよ』
外見とは違い、中身はスカスカなのかと、少しがっかりした気分で
俺は、もう関わるまいと、
崎谷のいるところへ戻っていく。
「祐紀さーん!!なぁに、ナンパしてーだよ?!
亜子に言いつけるぞぉ!」
酔っ払いが、目を覚ましてメンドクサイ事を言い出した。
「変なこと言ったら崎谷がルミ子の乳に夢中だったって前田にばらすぞ、おら!」
到着したタクシーに乗り込みながら、
めんどくせー酔っ払いを押し込んでいると、
後ろに
気配を感じる。
「………″亜子?″……崎谷くん?」
振り向くと、
先ほどの礼儀知らずの女が、
穴があくほどの強い目力で
俺と崎谷を見つめていた。
____だれだ、このおんな?
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