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准看護婦のその子は、
浦さんがパジャマを脱いで、上半身を露にすると、
その腕から肩、
背中の悪趣味なタトゥーに顔色を変えた。
「………………い、入れ墨って拭いていいんですか?」
「当たり前だろ?塗ってるわけじゃねーんだから!」
「す、スミマセン」
…………そりゃ、怖いわよね。
私は浦さんの新しい包帯等を準備しながら、
新人の子のことが、ちょっと気の毒になる。
「そんな吹き方じゃ、全然気持ちよくねーんだよ!もっとゴシゴシ拭けよ!」
「スミマセン……」
「あぁ!もうっ!貸せ!俺が背中やるから、お前は下半身拭けよ!」
「え」
さすがに手が止まったその子は、
私に助けを求める視線を送る。
「……浦さん、看護師が拭くのは、上半身と、膝から下です。」
私は、
後輩から、タオルを受け取り、交代するつもりで新しい熱いタオルをケースから取り出して、
その口うるさい男に近づいた。
…………だけど
「それじゃ、キレイになんねーだろうが?!それともなにか?!
男の下半身は汚いからできないのか?
ちがうか!
逆にムラムラ興奮して仕事になんねーから、そこは省いた仕事しかしねーのかっ?!
そうだろ、おばさん!」
相変わらず、女をばかにしたような目で
なおかつセクハラに近い発言をするから、私もイラついてしまい、
「あなた程度の男性には、欲情しません!」
と、
看護師らしからぬ発言をしてしまった。
「…………なに……」
浦の、顔がみるみる赤く、険しくなっていく。
「……てめ、退院したら覚えてろよ」
「………………あなたみたいに好き勝手にしていたら、いつまでも退院できないわよ」
こんな人は、
苦しまない程度に軟禁されていた方が、
世の中の為なのかもしれない、
「あ、先輩まってください!」
「こらっ!まだ、終わってねーだろーが?!」
「時間が、決まってます!」
またまた、
看護師失格の思いを抱きながら、
その病室を出た。
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