青の階段

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「馬鹿だろ?!おまえっ!」 由美さんの家に泊まった翌日、 夜間の仕事帰りのお父さんが迎えに来てくれた。 「早馬、朝からデカイ声出さないでよ、じいさん婆さん まだ、寝てるんだからさ」 朝の7時。 由美さんは、私とお父さんを玄関に残して、広人くんを起こしに二階に上がっていった。 「…………ごめんなさい」 「よりによって、何で平沼なんだよ。あんな糞野郎、今度コンバインドローラーで潰してやる」 「……前、駅で声をかけられて……」 建設機械に潰される平沼を想像したら笑いそうになったけど、 実は、まだ、首が痛いので、思いきり笑えない。 「お母さんが心配してた」 お父さんは、 かがみこんで、私に靴を履かせてくれていた。 「………………」 幼稚園の時以来だ。 「お母さんが、誰かと恋したら、寂しいか?」 かがみこんだお父さんの髪の分け目のところに、 一本の白髪を見つけてしまった。 「…………寂しいに決まってるじゃない」 お父さんも、 お母さんも、 確実に老いていく中で、 最終的に眠る場所は、同じであってほしいと、 やっぱり願ってしまう。 「佳苗、お前 寮出たらどうだ?」 「え?」 靴を履かせた私の手をとり、お父さんはゆっくりした足取りで車の方へ向かう。 「亜子は、自分と俺との同棲が、 佳苗を苦しめてるから、 お前が結婚するまでは、無理なんじゃないかって言ってきたんだ」 大島さん、 やっぱり、本気なんだ…… 「でも、俺は 佳苗も亜子も同じくらい大切なんだよ」 お父さんの気持ちも、 本気なんだね。 「三人で、住めないかな?長崎で」 二人の優しさが、 とても似ている事に気づいてしまったから だから、 よけいに自分が小さく思えて、 寂しくなったの。
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