56人が本棚に入れています
本棚に追加
彼は最初の被害者となった田畑を殴り殺したのだ。木村が体格がよい生徒で、田畑が線の細い先生なら、まだクラスメイトが恐怖で慄くことはなかっただろう。
だが、彼は昔から柔道をやっていたらしく、その体格は一目見てもほかの先生とはわけが違った。
その先生を一方的に殴り倒す有様を見て、クラスメイトは各々が自分ではかなわないと察し、遠巻きに木村を見ていたのだ。
木村はひくい声でうめくと、辺りを威嚇するように見つめていた。
今朝までは、俺たちはいつものように学校に来て、いつものように授業を受けていた。
誰も放課後、先生からあんな話を聞かされるまでは異変を感じていなかったと思う。
だが、後から思い返せば一つだけいつもと違うことはあったのだ。
それはこの木村が校舎内でものすごく綺麗な女性から声をかけられたと漏らしていたことだ。
保護者や、ほかの人が学校に来ることは稀にある。だから、他愛ない何もないことだと誰もが軽く聞き流していた。
「机を一斉に投げて、その隙に縛れないかな」
宮間はそう俺に耳打ちをする。
やらないよりはましだろう。
俺はクラスの後方で固まる生徒を一瞥した。その大部分は急な惨劇に身動き一つ取れないようだった。
最初のコメントを投稿しよう!