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うめき声に気付き、俺は再び木村のほうを向き直る。彼は元原から抜いたナイフを手に、こちらに歩いてきたのだ。
俺と宮間は近くの机を押し、木村にぶつけた。
彼はよろけるが、ものともせずにこっちに歩いてくる。
「今、何人無事なんだろうな」
「半分残っていればいいけどな」
そのとき、ガラスの破片が教室内に飛び散った。そこにはモップを手にした男性教師の姿があった。隣のクラスの担任の町田先生だ。
今まで密室の教室で敵は一人だけだったが、事情は変わる。
「もう逃げるしかない、か」
俺は宮間の言葉に頷いた。
クラスメイトを連れて逃げられたらいいが、限界はある。
横倒しになっている自分の机から鞄を手にすると、宮間を見た。
彼も自分のバッグを肩にかけていた。
「もう逃げたほうが良い。俺たちは特効薬を探しに行くよ」
「待って。このまま逃げる気?」
そう言ったのは教室の後方に友人と一緒に身を潜めていた大村彰美だ。
彼女の顔はひどく青ざめている。
気持ちもわかるが、怯えていてもどうしょうもない。
「このままここにいても死ぬか仲間になるだけだよ。お前たちも逃げたほうが良い」
「逃げるってどこに?」
「体育館倉庫か、他に厳重に鍵がかかる場所は……」
焦る気持ちを抑え、考えを巡らせていた俺の視界で血しぶきが飛ぶ。町田先生がモップで大村彰美の頭部をひっぱたいたのだ。
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