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笑いさえ浮かべながら、
社長令嬢と寝たんだと
私の前で語った
韮沢の顔を思い出す。
相性が良かったから
結婚しようと思ったと、
彼は言った。
──なんだそれ。
私では不満だったと
言いたいのか。
言われた瞬間には
気付けなかったことに、
今気付いてしまう。
昏い怒りが、
めらめらとお腹の底で
存在を主張してきた。
今、韮沢が
へらへらと笑いながら
私の前に現れたら、
天川さんの湧かしたお湯を
ぶっかけてしまうに違いない。
だいたい何なんだ。
社長のお嬢さんって。
社長令嬢って、
婚前交渉とかするものなの。
恥ずかしがって
出てこないし嫌がるのが
定石じゃないの。
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