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「すみれさん」
昼休憩にやってきた私を見て、
カウンターの中にいた
天川さんがぱあっと表情を
明るくする。
彼はお店を入ったところで
立ち尽くす私を手招きし、
たったひとつ空いていた
カウンター席に呼び寄せた。
「今日はドーナツ
入れてるんですけど、
食べますか?」
「ドーナツ?」
「ええ、僕の提案で
新規メニューとして
検討してるところなんです。
ありがたいことに、
うちは女性のお客様も多いので、
ちょっとしたマーケティングですね」
やたらにこにこしている
天川さんはあからさまに上機嫌だ。
言いながら彼は手元で
カップを用意していく。
私が紅茶を注文すること、
訊かなくても判っているみたい。
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